ケガをしても補償がない?自営業・フリーランスが知っておきたい「労災の特別加入」
先日のブログで、スポーツクラブのトレーナーをしている個人事業主の女性との会話をご紹介しました。
その後も何度かスポーツクラブに通ううちに、また彼女と話す機会がありました。今回のテーマは「労災保険」です。
そしてもうひとつ。前回お伝えした付加年金の話に、うれしい続きがありました。
01|会社員には「労災」がある
「仕事中にケガをしたとき、会社員はどうなるか知ってる?」
そう聞くと、彼女は「労災ですか?」と答えてくれました。言葉は知っていたようです。でも、具体的にどんな補償があるかは、あまり知らなかった様子でした。
労働者災害補償保険(労災保険)は、会社員が仕事中や通勤中にケガ・病気・障害・死亡した場合に補償される国の保険制度です。保険料は全額事業主負担で、労働者は以下のような手厚い補償が受けられます(業務災害の場合)。
| 給付の種類 | 内容 |
|---|---|
| 療養補償給付 | 労災病院・労災指定病院での治療費は自己負担なし(無料)。それ以外の病院でも、治療費を申請すれば支給されます。 |
| 休業補償給付 | 休業1〜3日目(待期期間)は事業主が労働基準法に基づき平均賃金の60%を補償。4日目からは労災保険から給付基礎日額の60%(休業補償給付)と20%(休業特別支給金)が支給され、合計80%を受け取ることができます。 |
| 障害補償給付 | 後遺障害が残った場合に年金または一時金 |
| 遺族補償給付 | 死亡した場合に遺族へ年金または一時金 |
「会社員ってそんなに守られてるんですね……」と彼女。
「そうなの。でも個人事業主には、原則としてこの労災保険が適用されないの」
「えっ」と、彼女の顔が少し曇りました。
02|個人事業主・フリーランスは「無補償」が原則
個人事業主やフリーランスは、労働者ではなく「事業主」にあたるため、原則として労災保険の対象外です。
つまり——
- 仕事中にケガをしても、治療費は全額自己負担
- ケガで仕事ができなくなっても、休業補償はなし
- 後遺症が残っても、障害給付はなし
スポーツトレーナーという仕事は、体が資本です。腰や膝を痛めるリスクも高い。「もし仕事中に大ケガをしたら…」と考えると、決して他人事ではない話です。
03|でも、入れる制度があります——「特別加入」
「じゃあ、個人事業主はどうしようもないの?」
そう聞かれたとき、私がお伝えしたのが「労災保険の特別加入制度」です。
特別加入とは、本来は労災保険の対象外である自営業者・フリーランスなどが、任意で労災保険に加入できる制度です。加入すれば、会社員と同様の補償を受けることができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入できる人 | 中小事業主、一人親方、特定の自営業者・フリーランスなど |
| 手続き先 | 労働保険事務組合または特別加入団体を通じて申請 |
| 保険料 | 自分で設定した「給付基礎日額」をもとに計算(3,500円〜25,000円の範囲で選択) |
| 補償内容 | 療養・休業・障害・遺族など、給付の種類は会社員の労災保険と同等。ただし補償額は実際の収入ではなく、自分で選んだ給付基礎日額をもとに算定されます。 |
「知らなかった…。でも今は少し考えたいかな」と彼女。
それで十分だと思います。こういう制度があると「知っているかどうか」で、いざというときの選択肢がまったく変わりますから。
04|「親が自営業だから、教えてあげます」
話の最後に、彼女がこう言いました。
「私はまだいいけど、親が自営業なので教えてあげようと思います。」
この一言がとても嬉しかったです。自分のこととしてすぐに動けなくても、大切な人に伝えてくれる。知識はそうやって広がっていくんだなと思いました。
おまけ|付加年金の話に、うれしい続きがありました
前回のブログで、個人事業主が使える「付加年金(月400円の上乗せ制度)」をご紹介しました。
彼女がその話をお母さんにしたところ——
「お母さん、付加年金の手続きしてきたって!」
思わず笑顔になりました。ブログやこういった会話で伝えた情報が、誰かの行動につながる。これが、私が発信を続けたいと思っている理由のひとつです。
労災の特別加入や付加年金など、「知らないと損をする制度」はまだまだたくさんあります。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。


