「紛争の原因は、法律違反だけじゃない。心の問題が大きい。でも、だからこそ足元を固めておくことが大切。」

社労士として労務相談をお受けしていると、こう感じることがあります。

「これは、規程が整っていないから起きた問題ではないな。」

もちろん、就業規則の不備や安全配慮義務の不足が原因で起きるトラブルもあります。でも、それだけではないのです。


紛争の根っこにあるもの

労務トラブルの相談を受けていると、法律や規程の問題よりも、もっと手前のところに原因があると感じることがあります。

それは、「心の問題」です。

上司と部下のコミュニケーションのすれ違い。仕事への考え方の違い。ちょっとした一言がきっかけで生まれた不信感。「あの人とはうまが合わない」という感情。

人間同士ですから、うまが合う人もいれば、合わない人もいます。それは仕方のないことです。職場は、さまざまな人が集まる場所です。全員と気持ちよく働けることが理想ですが、現実にはそうはいかない場面もあります。

私は以前、労働委員会の事務局で6年間、数多くの労使紛争を見てきました。そこで感じたのは、紛争の入口は、必ずしも法律違反ではないということです。小さな感情のもつれ、「聞いてもらえなかった」「大切にされていないと感じた」——そうした心の問題が積み重なって、ある日突然、法的な争いに発展する。そんなケースがたくさんありました。

だからこそ「足元を固める」

「心の問題が原因なら、就業規則を整備しても意味がないのでは?」

そう思われるかもしれません。でも、逆なのです。

心の問題は、コントロールできません。人間の感情を完全に管理することは不可能です。だからこそ、感情のもつれが法的なトラブルに発展したときに、使用者として足元をすくわれないよう、整えられるものは整えておく必要があるのです。

就業規則は整っていますか。ハラスメントの相談窓口はありますか。労働時間の管理は適正ですか。安全配慮義務を果たしていますか。

これらが整っていれば、たとえ感情的な対立が生じても、「会社としてやるべきことはやっている」と言えます。逆に整っていなければ、社員が労働基準監督署に相談に行ったとき、会社は非常に苦しい立場に追い込まれます。

足元を固めれば、トラブルは減る

足元を固めるということは、「紛争に備える」ためだけではありません。

就業規則がしっかりしている会社は、ルールが明確です。ルールが明確だと、「なぜ自分だけこういう扱いなのか」という不満が生まれにくくなります。相談窓口があれば、不満がたまる前に声を上げることができます。

つまり、足元を固めること自体が、トラブルの予防になるのです。

労働基準監督署に相談されるのは、社員が「もう会社には言っても無駄だ」と感じたときです。社内にきちんとした仕組みがあり、公平に運用されていれば、外部に駆け込む前に社内で解決できる可能性が高くなります。

労働委員会で学んだこと

労働委員会で見てきた紛争の多くは、「もっと手前の段階で、話し合いで解決できたはずのもの」でした。

小さなボタンの掛け違いが、取り返しのつかない泥沼になっていく。その過程を、何度も目の当たりにしてきました。

だから私は、社労士として「予防」にこだわっています。

心の問題は、なくせません。でも、足元を固めておけば、心の問題がこじれたときに、会社を守ることができます。そして、足元が固まっている会社は、そもそも心の問題がこじれにくい職場になっていくのです。


「うちの就業規則は大丈夫だろうか」「足元を固めたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。紛争の火種を早期に発見し、大ごとになる前に解決へと導く——それが社労士の仕事です。

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