「特定性犯罪」って何? 大人への犯罪も対象?——こども性暴力防止法が確認する犯罪歴の範囲

こども性暴力防止法(日本版DBS)では、こどもと接する仕事に就く人の「特定性犯罪歴」を確認します。

ではその「特定性犯罪」とは、具体的にどんな犯罪なのでしょうか。「窃盗や傷害も含まれるの?」「不起訴になった人は?」「成人への犯罪は?」——よく聞かれる疑問を、こども家庭庁のQ&Aをもとに整理します。


01|「特定性犯罪」とは何か

「特定性犯罪」とは、犯罪事実確認において照会対象となる性犯罪の類型です。具体的には、次のような法律で定められた性犯罪に関する罪が該当します。

  • 刑法
  • 児童福祉法
  • 児童買春・児童ポルノ禁止法
  • 性的姿態撮影等処罰法
  • 都道府県条例(いわゆる迷惑防止条例・青少年健全育成条例)

「都道府県条例も含まれる」という点は、見落としがちですが重要です。迷惑防止条例や青少年健全育成条例に基づく性犯罪歴も確認の対象になります。都道府県によって条例の内容が異なるため、事業者としても注意が必要です。

これらの法律に基づいて有罪判決が確定した場合に、「特定性犯罪事実該当者」となります。

02|照会できる期間——判決の種類によって違います

特定性犯罪で有罪判決を受けた場合でも、すべての期間が確認対象になるわけではありません。判決の種類に応じて、照会できる期間が定められています。

判決の種類起算日照会できる期間
拘禁刑(実刑・服役)刑の執行終了日から20年
拘禁刑(執行猶予)裁判確定日から10年
罰金刑刑の執行終了日から10年

この期間を経過すると、犯罪事実確認書には「特定性犯罪事実該当者ではない」と記載されます。過去に該当者であったことも、事業者には分からなくなります。

なお、刑法上の前科は一定期間で消滅しますが(拘禁刑の場合は10年、罰金の場合は5年)、こども性暴力防止法の照会期間はそれより長く設定されています。「刑法上の前科はもう消えているから大丈夫」とはならない点が、この制度の重要なポイントです。

03|窃盗や傷害は含まれない

「犯罪歴の確認」と聞くと、すべての犯罪歴が対象になると思われる方もいますが、そうではありません。

こども家庭庁のQ&Aには明確に、「特定性犯罪以外の罪(窃盗罪等)で刑が確定した者については、特定性犯罪事実該当者には当たらない」と記載されています。

つまり、窃盗・傷害・詐欺などの犯罪歴は、この制度では確認の対象外です。確認できるのは、あくまでも性犯罪に限られています。

04|不起訴・示談になった人も対象外

もうひとつ重要なポイントがあります。

不起訴処分や示談になった人は、特定性犯罪事実該当者には当たりません。

理由は明確です。この制度は「刑事裁判による事実認定」を根拠にしているからです。不起訴や示談は、裁判所が有罪と認定したわけではありません。したがって、たとえ性的な問題があったとしても、裁判で有罪が確定していなければ、犯罪事実確認の対象とはならないのです。

これはこの制度の限界のひとつであり、「初犯を防ぐことができない」と同様に、正直に向き合うべき点です。

05|大人への性犯罪も含まれる——これを知らない人が多い

こども家庭庁のQ&Aで、特に驚かれる方が多いのがこの点です。

「特定性犯罪」には、こどもに対する犯罪だけでなく、成人に対する性犯罪も含まれます。

Q&Aでは「含まれます」とひとことで明確に答えています。

「こどもを守る法律なのに、なぜ大人への犯罪まで?」と思われるかもしれません。しかし考えてみると、これは当然の設計です。大人に対して性犯罪を犯した人が、こどもに接する職場で働くことを許すべきでしょうか。答えは明らかです。性犯罪の被害者がこどもか大人かを問わず、加害者歴のある人をこどもに接する職場から遠ざける——それがこの法律の趣旨です。


まとめ:「特定性犯罪事実該当者」とはどんな人か

  • 対象になる:刑法・児童福祉法・児童ポルノ法・性的姿態撮影等処罰法・都道府県条例等に定める性犯罪で、有罪判決が確定した人(照会期間内)
  • 対象になる:こどもへの犯罪だけでなく、成人への性犯罪でも同様
  • 対象にならない:窃盗・傷害など性犯罪以外の犯罪歴
  • 対象にならない:不起訴処分・示談になった人
  • 対象にならない:照会期間(実刑20年・執行猶予と罰金は10年)を経過した人

事業者として就業規則や採用時の誓約書を整備する際には、「特定性犯罪」はこども性暴力防止法第2条第7項で定義されている法律用語であることを理解した上で、正確に対応することが重要です。就業規則や誓約書には「特定性犯罪事実該当者でないこと」という表現を使えば足り、具体的な犯罪名を列挙する必要はありません。


社労士・行政書士のダブルライセンスを持つ私は、就業規則の整備から採用時の誓約書・同意書の作成まで、ワンストップで対応できます。「うちの事業所はどう準備すればいいか」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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