【2026年施行】日本版DBSで職場はどう変わる?社労士が教える「今すぐできる」実務対応

「やっと、日本もここまで来たか」

こども性暴力防止法、いわゆる日本版DBS法が成立したとき、私は正直そう思いました。こどもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する仕組みが、ようやく日本でも動き出した瞬間でした。

社労士・行政書士として、この法律に積極的に取り組んでいる立場から、今感じていることを率直に書きます。


01|日本版DBSとは何か

正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」、通称「こども性暴力防止法」といいます。2024年6月19日に参議院本会議で全会一致により可決・成立し、2026年12月の施行が予定されています。

この法律の核心は、こどもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を事業者が確認できる仕組み(犯罪事実確認)を整備することです。こども家庭庁を通じて法務省に照会し、性犯罪歴の有無を確認した「犯罪事実確認書」が事業者に交付されます。

日本版DBSはイギリスのDBS制度を参考に作られました。イギリス・ドイツ・フランスでは、こどもに関わる職種についてすでに犯罪歴照会が義務化されており、日本はそれらの国に学ぶ形で制度化に至りました。

02|この法律で「防げること」と「防げないこと」

この法律について、正直にお伝えしたいことがあります。

日本版DBSは「初犯を防ぐことは、難しい」制度です。これは制度の限界として、正面から受け止める必要があります。

しかし——「再犯を防ぐ」ことには、大きな力を発揮します。

確認の対象は、特定の性犯罪で有罪が確定した人です。なお、不起訴処分は現時点では対象外とされています。

確認できる性犯罪歴の期間は、判決の種類によって異なります。

判決の種類起算日照会できる期間
拘禁刑(実刑・服役)刑の執行終了日から20年
拘禁刑(執行猶予)裁判確定日から10年
罰金刑刑の執行終了日から10年

刑法上の「前科の消滅」(拘禁刑なら10年、罰金なら5年で消滅)よりも長い期間、記録が照会の対象となります。「刑法上の前科は消えているから大丈夫」とはならない点が、この制度の重要なポイントです。

「完璧ではないから意味がない」ではなく、「できることをやる」。その積み重ねが、安全な社会をつくると私は信じています。

03|対象はこども。施行は2026年

法律の名称に「児童対象」とある通り、この法律が守ろうとしているのはこどもです。

対象事業は大きく2種類に分かれます。

  • 義務対象事業者:学校、認可保育所・幼稚園、認定こども園、放課後等デイサービス、児童養護施設、障害児入所施設、児童館など。犯罪事実確認の実施が義務づけられます。
  • 認定事業者(任意):学習塾、スポーツクラブなど。国の認定を受けることで確認制度に参加でき、認定マークの表示が可能になります。

施行予定は2026年12月25日。雇用形態・契約の有無にかかわらず、ボランティアや短期労働者も確認の対象となります。

04|制度整備のスピードに、現場がついていけていない

この法律への取り組みを進めていて、実感していることがあります。

法律は成立しましたが、政令・ガイドラインの策定、システム構築、事務マニュアルの整備など、実務的な準備はまだ進行中です。事業者側も「何をどう準備すればいいのか」がわからないまま時間だけが過ぎていく——そんな状況を目の当たりにしています。

だからこそ、今できることに着手することが重要だと考えています。

05|今すぐできる、最も現実的な対応——就業規則の改定

DBS法への対応として、今すぐ着手できる現実的な方法が就業規則の改定です。

具体的には、就業規則に以下のような規定を盛り込むことが考えられます。

  • 犯罪事実確認への協力義務に関する規定:採用時・配置転換時に、事業者が行う性犯罪歴の確認(犯罪事実確認)に協力することを従業員の義務として明記する。
  • 特定性犯罪歴の申告義務に関する規定:採用時および在職中に特定の性犯罪歴が生じた場合、速やかに申告する義務を定める。
  • 虚偽申告・申告漏れに対する懲戒規定:犯罪歴の隠蔽や虚偽の申告を懲戒処分の対象として明確化する。
  • 在職中の性犯罪に対する懲戒解雇規定:在職中に特定の性犯罪で有罪が確定した場合の対応を明記する。
  • 安全確保措置への協力義務に関する規定:こどもと従業員が1対1になることを避けるなど、事業者が定める安全確保措置に従う義務を定める。
  • 研修受講義務に関する規定:こどもへの性暴力防止に関する研修への参加を義務づける。

就業規則は、会社と社員の間の「約束」です。職場として「こどもを守ることを最優先にする」という姿勢を文書で示すことは、単なる法的対応を超えた意味を持ちます。

06|社員だって、「安全な職場」を心から望んでいる

「就業規則を変えると社員が嫌がるのでは」と心配される事業者の方がいます。でも、私はそうは思いません。

犯罪が起きるような職場に、喜んで働きたい人はいません。自分の職場で誰かが傷つくことを望んでいる人もいない。社員のほとんどは、安全で誠実な職場であることを、心から願っているはずです。

就業規則の改定は、社員への「お知らせ」でもあります。「うちの職場はこどもの安全を真剣に考えています」というメッセージ。それは採用にも、職場への信頼にも、じわじわと影響していきます。


社労士と行政書士、ダブルライセンスだからできること

DBS法への対応は、実は複数の専門領域にまたがっています。

  • 就業規則の作成・改定は、社会保険労務士(社労士)の専門業務です。懲戒規定の整備、労働基準監督署への届出まで対応できます。
  • 誓約書・同意書・確認書などの書類作成は、行政書士の専門業務です。行政書士法に定める「権利義務に関する書類」の作成業務に該当し、採用時の性犯罪歴に関する誓約書や犯罪事実確認への同意書など、法的に有効な書類を整備できます。

この両方をひとりの専門家がワンストップで対応できるのが、社労士・行政書士のダブルライセンスを持つ私の強みです。複数の専門家に分けて依頼する手間や、認識のズレが生じるリスクを減らすことができます。

「何から手をつければいいかわからない」「就業規則を早めに整備しておきたい」という事業者の方は、ぜひ一度ご相談ください。施行前の今こそ、準備を進めるタイミングです。

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