DBS法「不適切な行為」とは何か——就業規則に盛り込む前に
こども性暴力防止法(日本版DBS)への対応として、就業規則に「不適切な行為」を盛り込む必要があります。
でも、就業規則を作る前にやるべき大切なことがあります。それは「職場で話し合うこと」です。
社労士として就業規則の作成に携わる中で、ここが一番の肝だと感じています。
01|「不適切な行為」とは何か
こども性暴力防止法でいう「不適切な行為」とは、性暴力そのものには該当しないものの、継続・発展することによって性暴力につながり得る行為のことです。
こども家庭庁のガイドラインでは、以下のような行為が例示されています。
- こどもとSNSで私的なやり取りをする
- 私的な端末でこどもの写真を業務外の目的で撮影する
- こどもと二人きりで私的に会う
- 不必要な身体接触を行う
- 特定のこどもばかり理由なく担当しようとする
「不適切」と判断されるものは、一律ではありません。事業の内容、こどもの発達段階、現場の状況によって変わり得るとされています。
だからこそ、各事業者が自分たちの職場の実態に合わせて内容を決める必要があるのです。
02|使用者への聞き取りだけでは足りない
就業規則を作る際、多くの場合は使用者(経営者・管理職)への聞き取りから始めます。しかし「不適切な行為」の定義については、使用者への聞き取りだけでは不十分です。
理由は明確です。こども家庭庁のガイドラインには、こう明記されています。
現場で実際に働く従事者とコミュニケーションを取りながら決めること。職場が過度に萎縮しないよう配慮しつつ。
現場の実態を一番知っているのは、日々こどもと接している職員です。「これは不適切になるのか」「この行為はどうなのか」——現場でしか見えない疑問や実態があります。それを拾い上げることなく、経営者だけの判断で「不適切な行為」を決めてしまうと、現場の実態と乖離したルールになってしまいます。
03|職員同士の話し合いが必要な理由
では、なぜ「職員同士の話し合い」が重要なのでしょうか。
たとえば、こんなケースを考えてみてください。
- スポーツ指導で身体に触れることが日常的にある現場
- 水泳やダンスなど、着替えや肌の露出が伴う現場
- こどもが泣いているときに抱きしめることがある保育の現場
こういった現場では、「身体接触はすべて不適切」と一律に決めてしまうと、通常の業務すらできなくなります。一方で「業務だから何でもOK」では、性暴力防止の意味をなしません。
現場の職員が「どこまでが業務上必要な行為で、どこからが不適切か」を自分たちで話し合い、言葉にする——このプロセスこそが、実効性のあるルール作りの基盤になります。
また、職員が話し合いに参加することで、ルールへの納得感が生まれます。「上から決められたルール」ではなく「自分たちで決めたルール」として受け止めてもらえるのです。
04|社労士として、こんなふうに進めています
私が就業規則の作成をお手伝いする際は、以下のような流れで進めます。
- ステップ① 使用者への聞き取り:事業の内容、こどもとの関わり方、現在の課題を把握する
- ステップ② 職員同士の話し合いの場を設ける:「不適切な行為」の範囲について、現場の職員が意見を出し合う機会を作る。当事務所では、この話し合いの場で使用する資料を使用者と相談しながら作成・提案しています。「何を話し合えばいいかわからない」という事業者の方でも、スムーズに進められるようサポートします。
- ステップ③ 話し合いの結果をまとめる:出てきた意見を整理し、職場の実態に合った「不適切な行為」の定義を作る
- ステップ④ 就業規則に盛り込む:定義をもとに、法的に有効な形で就業規則に規定を追加する
- ステップ⑤ 周知する:職員・こども・保護者に対して、定めた内容を伝える
使用者への聞き取りから就業規則の完成まで、ひと手間かける必要があります。でもそのひと手間が、実効性のある、現場に根ざしたルールを作ることにつながります。
「不適切な行為」の定義は、職場の安全文化をつくる第一歩です。「うちの職場はどう進めればいいか」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。社会保険労務士・行政書士のダブルライセンスで、ワンストップで対応します。


