2028年4月から「一生涯」が「5年間」に。遺族年金改正と、私自身の話
遺族年金の法改正について、一度ブログに書いておきたいと思っていました。制度の解説だけでなく、私自身のことも含めて。
01|今回の改正、大きなポイントは2つ
今回の遺族厚生年金の改正で、特に注目すべき点は以下の2つです。
ポイント① 月額が約1.3倍に増える(有期給付加算)
「約1.3倍」と聞いても、ピンとこない方も多いと思います。仕組みを整理すると、こうなります。
現在の遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の4分の3(75%)が支給されます。改正後の5年間は、新たに有期給付加算として4分の1(25%)が上乗せされます。合計すると老齢厚生年金の100%が支給されることになります。
| 計算のもとになる額 | 支給割合 | |
|---|---|---|
| 改正前 | 亡くなった方の老齢厚生年金 | 4分の3(75%) |
| 改正後(5年間) | 亡くなった方の老齢厚生年金 | 4分の3+有期給付加算4分の1=100% |
75%が100%になる——これが「約1.3倍」と表現されている理由です。
また、5年間の有期給付が終了した後も、すぐに打ち切りになるわけではありません。障害状態にある方や、収入が十分でない方は「継続給付」として引き続き受け取ることができます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給されます。収入が増えるにつれて支給額が調整される仕組みです。
ポイント② 「60歳未満で子どものいない配偶者」への給付が大きく変わる
今回の改正で最も議論を呼んだのがこの点です。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 30歳以上の妻 | 一生涯もらえる | 原則5年間の有期給付に統一 |
| 夫 | 原則もらえない | 同上(男女平等に) |
改正前は「30歳以上の妻は一生涯」「夫は原則もらえない」という男女差がありました。改正後は男女平等になりますが、その代わりに給付期間が原則5年間の有期給付に統一されます。
給付期間が一生涯から5年間に短縮される。これが今回最も大きな変化です。
02|遺族年金には2種類ある——私自身の話と合わせて
少し個人的な話をさせてください。私が小学1年生のとき、父が病で他界しました。専業主婦だった母が、幼い子ども二人を抱えてどれほど不安だったか。数年前に初めて聞いた言葉は、今も忘れられません。母はその後、公務員になり、女手ひとつで私たちを育ててくれました。その背中を見て育ったから、私も公務員の道を選びました。
ここで大切な前提をお伝えします。遺族年金には2種類あります。
| 種類 | 対象 | 支給期間 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 子のいる配偶者・子 | 子が18歳年度末まで |
| 遺族厚生年金 | 会社員・公務員の遺族 | 改正前:30歳以上の妻は一生涯 改正後:原則5年間(有期給付) |
私の父は会社員でした。母は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取っていました。私と妹が18歳年度末を過ぎてからも、遺族厚生年金は一生涯もらい続けることができる制度でした。しかし母の場合は、父が他界してから公務員として長年働いたため、自分自身の老齢厚生年金の方が多く、遺族厚生年金は受け取らない選択をしました。年金には「どちらか有利な方を選ぶ」という仕組みがあるからです。母が必死に働き続けたからこそ、そういう選択ができたのだと思います。
もし母が今回の改正後の制度だったとしたら——妹が18歳年度末になった時点で、遺族厚生年金も5年間で終わっていたことになります。
同じ状況でも、制度が違うだけでこれほど結果が変わる。改めてそのことを重く受け止めています。
「5年間で生活を立て直す」という制度設計の趣旨はわかります。でも、現実はそれほど単純ではありません。これは改悪ではないのか——正直、そう感じずにはいられません。
ここで「子どものいる配偶者」の扱いについて、少し詳しく整理しておきます。
今回の改正で「原則5年間の有期給付」となるのは、60歳未満で子どものいない配偶者です。子どものいる配偶者は、すぐに有期給付の対象になるわけではありません。ただし、状況によって以下のように変わります。
| 状況 | 遺族年金の扱い |
|---|---|
| 子どもが18歳未満(高校卒業前)の間 | 従来通り遺族年金を受け取れる |
| 子どもが全員18歳を超えた後、配偶者が60歳未満の場合 | 有期給付(原則5年間)の対象になる可能性あり |
| 子どもが全員18歳を超えた後、配偶者が60歳以上の場合 | 引き続き遺族年金を受け取れる |
つまり「今は子どもがいるから大丈夫」と思っていても、子どもが独立した時点で配偶者がまだ60歳未満であれば、有期給付の対象になる可能性があります。たとえば若くして配偶者を亡くした場合、子どもが独立しても自分はまだ40代・50代ということも十分あり得ます。ご自身の状況をぜひ一度確認しておくことをおすすめします。
遺族年金は「もらえて当たり前」と思っていた方にとって、今回の改正は大きな転換です。
「自分はどうなるの?」「家族に何かあったときの備えは?」と気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。社会保険労務士・行政書士・FP2級のトリプルライセンスで、年金・保険・家計の観点からトータルにサポートします。


