残業代を払いすぎていませんか?社長が知らなかった「残業代の計算方法」
先日、ある社長と話す機会がありました。
その社長は以前、全社員の残業代の未払いが発覚し、過去にさかのぼって計算し直して支払ったことがあったそうです。誠実な対応だと思います。ところが——
「総支給額から、時間外手当の時給を求めた。」
私がそれを聞いて「実は家族手当、通勤手当、住宅手当などは、残業代の計算基礎に含めなくていいんですよ」とお伝えすると、社長は初めて知ったと驚いていました。
「社労士に相談してくれれば……」と言うと、社長はこう言いました。
「社会保険労務士が何をやる人か知らなかった。」
社労士の知名度の低さを改めて実感した瞬間でした。必要な人に、必要な情報が届いていない。このブログがそのきっかけになればと思い、今日は残業代の計算方法について書きます。
01|残業代の「単価」はどうやって決まるのか
残業代(時間外割増賃金)の計算式はこうです。
| 計算式 |
|---|
| 残業代 = 割増賃金の基礎となる賃金 ÷ 月所定労働時間 × 1.25(時間外労働の場合) × 残業時間数 |
ポイントは「割増賃金の基礎となる賃金」です。これは月給全額ではありません。労働基準法では、一定の手当を基礎から除外してもよいと定めています。
02|残業代の基礎から除外できる手当
労働基準法第37条および同法施行規則第21条により、以下の7種類の手当は残業代の計算基礎から除外することができます。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
冒頭の社長のケースでいえば、通勤手当・家族手当・家賃手当(住宅手当)はすべてこの除外できる手当に該当します。これらを含めて計算していたということは、本来より多く支払っていたことになります。
03|ただし「名称」ではなく「実態」で判断される——ここが重要
ここで大切な注意点があります。
手当の名称が「家族手当」「通勤手当」であっても、実態によっては除外できない場合があります。
たとえば——
- 「家族手当」という名称でも、扶養家族の有無にかかわらず全員に一律で支給している場合は、実態として「家族の有無に応じた手当」ではないため、除外できません。
- 「住宅手当」という名称でも、住宅費の実費にかかわらず全員に一律で支給している場合も同様です。
つまり、除外できるかどうかは「支給条件が個人の事情に応じているかどうか」で判断されます。名称だけで判断すると誤りになることがあるので注意が必要です。
04|社労士に相談すれば防げたこと
冒頭の社長の話に戻ります。未払い残業代を支払うこと自体は正しい対応です。しかし、計算方法を知らなかったために本来払わなくてよかった金額まで支払ってしまった。
社労士は、給与計算・残業代計算・就業規則の整備など、会社の「労務管理」を専門とする国家資格者です。「残業代の計算が合っているか確認したい」「就業規則を見直したい」といった相談を、日々受けています。
社長がおっしゃった「社会保険労務士が何をやる人か知らなかった」という言葉が、今も頭に残っています。もっと多くの経営者の方に、社労士の存在と役割を知ってもらいたい。そのためにもこのブログを書き続けていこうと思っています。
「うちの残業代の計算方法は合っているだろうか」「手当の扱いが正しいか確認したい」という経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。


