勤怠システムの「まるめ処理」が未払い残業代を生む——毎日1分でも切り捨てたら違法です
先日、勤怠管理システムの説明を聞く機会がありました。担当者からこんな説明がありました。
「まるめ処理ができます。毎日15分以上働かないと時間外労働ゼロ時間、または毎日30分以上働かないと時間外労働ゼロ時間という設定ができます。」
思わず「えっ、毎日なんですか?」と聞き返しました。
システムとしてそういう設定ができてしまうからこそ、未払い残業代が生まれるのだと、改めて感じた瞬間でした。
01|毎日の残業時間——1分でも切り捨てたら違法です
労働基準法第24条では、賃金はその全額を労働者に支払わなければならないと定められています。また、同法第37条では、時間外労働に対して割増賃金を支払わなければならないとされています。
これらの規定に基づき、毎日の時間外労働については、1分単位で計算することが原則です。
毎日1分でも切り捨てたら違法です。
「毎日15分未満は切り捨て」「毎日30分未満はゼロ扱い」——こういった設定は、たとえシステムでできたとしても、労働基準法違反となります。
02|例外的に認められている「まるめ処理」は1か月単位だけ
では、まるめ処理は一切認められないのでしょうか。
いいえ、1か月単位での端数処理は、例外的に認められています。
具体的には以下の通りです。
| 単位 | 切り捨て | 根拠 |
|---|---|---|
| 毎日の残業時間 | ❌ 1分でも切り捨て不可。違法 | 労働基準法第24条・第37条 |
| 1か月の合計残業時間 | ✅ 30分未満の端数は切り捨て可(30分以上は1時間に切り上げ) | 昭和63年基発150号 |
1か月の合計残業時間が19時間29分の場合、29分を切り捨てて19時間として計算することは認められています。これは「事務処理を簡素化するための例外的な取り扱い」として通達で認められているものです。
「毎日」と「1か月合計」——この違いが非常に重要です。
03|システムの設定が「法違反」を生む
今回の勤怠システムの説明で驚いたのは、違法となる設定がシステム上で簡単にできてしまうという事実です。
「毎日15分未満はゼロ」という設定を使い続けた場合、たとえば毎日14分の残業をしている従業員は、1か月20日勤務で合計280分(約4時間40分)の残業代が未払いになります。これが数年続けば多額の未払い残業代が発生します。
「システムでそう設定しているから」「以前からそうだったから」は、法律上の言い訳にはなりません。未払い残業代の請求権は現在3年(将来的には5年への延長が予定されています)さかのぼることができます。
04|就業規則への明記も重要です
端数処理のルールは、就業規則に明記しておくことが重要です。「1か月の合計残業時間の30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げる」という正しいルールを就業規則に定め、従業員に周知しておくことで、トラブルを防ぐことができます。
逆に、就業規則に「毎日15分単位で計算」などと記載されている場合は、その規定自体が違法となります。今すぐ確認・修正が必要です。
「うちの勤怠システムの設定は適法か確認したい」「就業規則の端数処理の規定を見直したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。社会保険労務士・行政書士のダブルライセンスで、ワンストップで対応します。


