「特定性犯罪事実該当者」とわかったら、事業者はどう対応する?——防止措置の内容と注意点
DBS法(こども性暴力防止法)では、犯罪事実確認の結果、対象業務従事者が「特定性犯罪事実該当者」であることが判明した場合、事業者は速やかに防止措置を講じることが求められます。
「特定性犯罪事実該当者とわかったら、すぐに解雇できるのか」「内定取消は可能なのか」——実務上の疑問に、こども家庭庁のQ&Aをもとにお答えします。
01|「特定性犯罪事実該当者」とは
特定性犯罪事実該当者とは、強制性交等罪・痴漢・盗撮など、DBS法が定める「特定性犯罪」について、一定期間内に有罪判決を受けた者のことです。
こどもに対する犯罪だけでなく、成人に対する性犯罪も含まれます。また、国籍を問わず対象となります。
02|特定性犯罪事実該当者とわかった場合の防止措置
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であると判明した場合、事業者は対象業務に従事させないことが求められます。具体的には、次のような措置が必要です。
| 該当者の状況 | 求められる措置 |
|---|---|
| 新規採用の内定者 | 内定取消 |
| 試用期間中の者 | 解約(本採用拒否) |
| 現職者 | 配置転換等 |
「対象業務に従事させない」ことが大原則です。ただし、これらの措置を講じるにあたっては、労働関係法令等を遵守した対応が必要とされています(Q&A 7-3)。特定性犯罪事実該当者であるという事実だけで、即座に解雇できるわけではありません。
03|施行前から働いている現職者が該当した場合
法施行前から既に従事しており、採用選考過程において特定性犯罪事実該当者であるかの確認を行っていなかった現職者について、犯罪事実確認を行った結果、特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合はどうなるでしょうか。
こども家庭庁の回答はこうです。
事業者は、対象業務に従事させないよう配置転換等の措置を行うことが必要です。
施行前から勤務していた現職者であっても、判明した以上は配置転換等の措置が必要です。「以前から働いていたから仕方ない」とはなりません。
なお、配置転換以外の措置(解雇など)の考え方については、ガイドライン Ⅶ. 安全確保措置(防止措置)2(4)①ウ「現職者の場合の対応」に詳細が示されています。
04|社労士として押さえておきたい「労働関係法令との関係」
防止措置を実施する際に注意が必要なのが、労働関係法令との整合性です。
内定取消・本採用拒否の場合
内定取消や本採用拒否は、客観的合理的な理由がなければ違法となる可能性があります。特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合は合理的な理由となり得ますが、就業規則に根拠規定を設けておくことが重要です。
配置転換の場合
配置転換を命じるためには、就業規則に配置転換命令に関する規定があることが前提となります。また、配置転換先の業務内容・労働条件が著しく不利益でないかも確認が必要です。
解雇を検討する場合
解雇は、客観的合理的な理由があり、社会通念上相当と認められなければ無効となります(労働契約法第16条)。特定性犯罪事実該当者であるという事実だけで即解雇が正当化されるわけではなく、個別の事情を慎重に検討したうえで対応することが求められます。
05|今から準備しておくべきこと
施行(2026年12月25日)までに、次の点を整備しておくことをお勧めします。
- 就業規則への規定追加——特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合の内定取消・配置転換・解雇についての根拠規定を設ける
- 対応手順の明確化——判明した場合に誰が・何を・どのような順序で対応するかをあらかじめ決めておく
- 誓約書の整備——採用時に特定性犯罪前科がないことの誓約書を取得し、虚偽があった場合の懲戒規定を設ける
「手続きのスケジュールを一緒に整理したい」「就業規則の整備とあわせて相談したい」という幼稚園・保育所・学校・学習塾・スポーツクラブなど、こどもと接する事業を営む事業者の方は、ぜひ一度ご相談ください。社会保険労務士・行政書士のダブルライセンスで、ワンストップで対応します。


