「妻が年上だから加給年金はつかない」——でも、妻には振替加算がもらえるかもしれません
先日、65歳になった会社員の方からこんな話を聞きました。
「妻は68歳で年上だから、私には加給年金はつかないんですよね。」
確かにその通りです。でも話はそこで終わりませんでした。
「奥様はすでに年金をもらっていますか?」と聞くと、「はい、ずっと専業主婦でしたが老齢基礎年金をもらっています」とのこと。
「それなら奥様に振替加算がつく可能性があります。ただし、自動的にはもらえないので手続きが必要です。」
「そんな制度があるんですか!知りませんでした。」
今日はこの「振替加算」についてお伝えします。
01|まず「加給年金」とは何か
振替加算を理解するために、まず加給年金のしくみを整理します。
加給年金とは、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になったとき、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に、年金に上乗せされる制度です。
2025年度の金額は、基本となる加給年金額が年額239,300円です。さらに受給権者(夫)の生年月日に応じて「特別加算額」が上乗せされます。昭和18年4月2日以降生まれの方の場合、特別加算額176,600円が加算され、合計年額415,900円になります。
なお、2028年4月1日施行の法改正により、加給年金額および特別加算額はそれぞれ1割減額となる予定です。ただし、2028年3月31日時点ですでに加給年金を受け取っている方には経過措置が設けられています。
ただし、配偶者が65歳に達すると加給年金は終了します。また、配偶者がすでに65歳以上であれば、最初から加給年金はつきません。
冒頭の方のように「妻が年上ですでに68歳」という場合、妻はすでに65歳を過ぎているため、加給年金の対象にはなりません。
02|「加給年金がつかない」で終わりではありません——振替加算とは
今回の事例のように妻が年上の場合、夫が65歳になったとき妻はすでに65歳以上のため、加給年金は最初から発生しません。
しかし、夫が65歳になって厚生年金の受給を開始したタイミングで、すでに老齢基礎年金を受け取っている妻の年金に「振替加算」が上乗せされる制度があります。
振替加算の対象となるのは、以下の条件をすべて満たす方です。
- 夫(配偶者)の厚生年金加入期間が20年以上であること
- 振替加算を受ける本人(妻)が大正15年4月2日~昭和41年4月1日生まれであること
- 本人(妻)が老齢基礎年金を受け取っていること
昭和41年4月2日以降生まれの方は振替加算の対象外です。これは、その世代からは女性も厚生年金に加入する機会が増えたため、振替加算による保護が不要と判断されたためです。
03|振替加算の金額はどのくらいか
振替加算の金額は、受け取る本人(妻)の生年月日によって異なります。生年月日が新しいほど金額は少なくなります。
2025年度の金額の目安としては、昭和2年4月1日以前生まれの方は年額238,600円が上限で、生年月日が新しくなるにつれて段階的に減少し、昭和41年4月1日生まれの方はごくわずかな金額になります。
正確な金額は、日本年金機構の「振替加算額の早見表」でご確認いただくか、お近くの年金事務所にお問い合わせください。
04|大切なこと——自動的にはもらえません
ここが最も重要なポイントです。
振替加算は、何もしなくても自動的に支給されるわけではありません。
振替加算を受け取るためには、「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届(様式第222号)」を年金事務所に提出する手続きが必要です。
手続きをしなければ、もらえるはずの振替加算を受け取れないまま時間が過ぎてしまいます。「もらえる権利があるのに知らなかった」——そういう方が今もいるのだと思います。
冒頭の方も「手続きが必要なんですね!すぐ確認します」とおっしゃっていました。
「振替加算の対象になるか確認したい」「年金の手続きについて相談したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。社会保険労務士・FP2級の知見から、丁寧にご説明します。


