「夫より年金が少ないのは、夫がちゃんと掛けてなかったから?」——専業主婦の年金のしくみ、知っていますか

知り合いのお母さんから、こんな話を聞きました。

「私の年金、夫よりずっと少ないの。夫がちゃんと掛けてなかったんじゃないかって思ってるんだけど……」

そのお母さんは、ずっと専業主婦でした。

社労士である私には、なぜ年金額に差があるのかすぐわかります。でも、そのお母さんには誰も説明してこなかった。若いころに誰かが教えてくれていれば——そう思わずにはいられませんでした。

今日は、専業主婦の年金のしくみについて、できるだけわかりやすく書きます。


01|日本の年金は「2階建て」です

まず、年金のしくみを整理しましょう。日本の年金は大きく2つに分かれています。

階層名称対象
1階部分老齢基礎年金原則、日本に住む20〜60歳の全員
2階部分老齢厚生年金会社員・公務員のみ

会社員の夫は、この1階と2階の両方を受け取ります。一方、ずっと専業主婦だった妻は、1階部分(老齢基礎年金)だけです。

夫の年金が多いのは、夫が「掛けていなかった」からではありません。会社員だったから、2階部分も受け取れるのです。

02|専業主婦は「第3号被保険者」——保険料を払わなくてよかった

会社員や公務員の配偶者(主に専業主婦)は、「第3号被保険者」という区分になります。

第3号被保険者は、自分では国民年金の保険料を払わなくても、国民年金に加入しているとみなされます。保険料は、会社員・公務員全体(第2号被保険者全体)が納める厚生年金保険料の中から拠出される仕組みです。

つまり、専業主婦の方は保険料を払わなくても老齢基礎年金を受け取る権利があります。これは制度上の「配慮」です。

ただし、受け取れるのはあくまでも1階部分(老齢基礎年金)だけ。2階部分(老齢厚生年金)は、自分自身が会社員や公務員として働いた期間がなければ受け取れません。

03|年金のモデルケースは「夫婦二人で暮らす」前提

ここが、私がずっと気になっていることです。

日本の公的年金制度のモデルケースは、今でも「会社勤めの夫と専業主婦、二人合わせて老後を暮らす」という前提に立っています。

確かに、夫婦二人の年金を合計すれば、それなりの金額になります。夫の老齢基礎年金+老齢厚生年金と、妻の老齢基礎年金を足せば、二人で生活できるように設計されているのです。

でも、現実はどうでしょう。

  • 夫が先に亡くなったら、妻の収入はどうなるか
  • 離婚した場合、妻の年金はどうなるか
  • 「二人で暮らす」前提が崩れたとき、妻一人の年金だけで生活できるか

老齢基礎年金の満額は、2025年度で月額約69,108円です。一人で生活するには、心もとない金額です。

04|若いときに誰も教えてくれなかった

冒頭のお母さんの話に戻ります。

「夫がちゃんと掛けてなかったんじゃないか」と疑ってしまうのは、無理もありません。誰も説明してこなかったからです。

結婚して専業主婦になるとき、「あなたは第3号被保険者になります。老後に受け取れるのは老齢基礎年金だけです。夫婦二人合わせて老後の生活を考えてください」と、誰かが丁寧に説明してくれていたでしょうか。

おそらく、ほとんどの方が説明を受けていません。

知らないまま専業主婦として何十年も過ごし、いざ年金をもらう年齢になって初めて「なぜこんなに少ないの?」と気づく——それは制度の問題でもあります。


このブログが、「そういうことだったのか」と気づくきっかけになれば嬉しいです。

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