「相談に行くと、払え払えって言われるから」——免除と滞納は違います。知らないと損をする年金の話
年金相談員をしている社労士の仲間から、こんな話を聞きました。
「65歳を過ぎて、年金をもらいたいけど今まで掛けたことがない、どうすればいいかという相談が来るんです。でも70歳まで掛けても10年(受給資格期間)に満たない。なぜもっと早く相談に来なかったのか聞いたら、『来ると、払え、払えって言われるから』って言うんですよ。」
胸が痛くなる話でした。
国民年金には「免除」という制度があります。免除と滞納は全く違います。でも「払え、払え」と言われるイメージがあるから相談に来られない——知らないまま時間だけが過ぎていく。そんな方が、今もたくさんいるのだと思います。
01|免除と滞納は、まったく違います
国民年金の保険料を「払っていない」状態には、2種類あります。
| 滞納 | 免除 | |
|---|---|---|
| 意味 | 払う義務があるのに払っていない状態 | 申請により、払う義務が正式に猶予・免除された状態 |
| 受給資格期間 | 算入されない | 算入される |
| 老齢基礎年金への影響 | その期間は年金額に反映されない | 免除の種類に応じて一部反映される |
| 後から払えるか | 時効(2年)前であれば納付可能 | 10年以内なら追納可能 |
滞納はただ払っていないだけで、受給資格期間にも算入されません。一方、免除は正式な手続きを経て認められたもので、受給資格期間に算入されます。この違いはとても大きいのです。
02|免除制度とはどんなものか
国民年金の保険料免除制度には、いくつかの種類があります。
- 全額免除:所得が一定以下の場合、保険料の全額が免除されます。免除期間は受給資格期間に算入され、国庫負担分(2分の1)が年金額に反映されます。
- 一部免除(4分の3・半額・4分の1):所得に応じて、保険料の一部が免除されます。残りの保険料を納付することが条件です。
- 納付猶予制度:50歳未満の方で所得が一定以下の場合、保険料の納付が猶予されます。受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。
- 学生納付特例:学生の場合、在学中の保険料納付が猶予されます。
いずれも、申請が必要です。申請しなければ「滞納」のままになってしまいます。
03|「払え、払え」と言われるから来られない——この現実
免除という制度があるのに、なぜ相談に来なかったのか。
「来ると、払え、払えって言われるから。」
この一言が、すべてを物語っています。相談窓口に対して「責められる場所」というイメージを持っている方が、少なくないのだと思います。
でも、免除の申請は責められることでも恥ずかしいことでもありません。生活が苦しいときのために、国が用意している正当な制度です。利用することは、何ら後ろめたいことではありません。
早く相談に来ていれば、免除申請ができていた。受給資格期間に算入されていた。場合によっては年金を受け取れていたかもしれない——そう思うと、伝える仕組みの大切さを改めて感じます。
04|国民年金の「任意加入」と「特例任意加入」
国民年金は、20歳以上60歳未満の方が強制加入となります。では60歳以降はどうなるのでしょうか。
60歳以降は強制加入ではありませんが、年金額を増やしたい方や受給資格期間(10年)をまだ満たしていない方のために、「任意加入制度」が設けられています。原則として60歳以上65歳未満の方が対象です。
さらに、受給資格期間を満たしていない方のために、「特例任意加入制度」があります。これは65歳以上70歳未満の方(昭和50年4月1日以前生まれの方限定)が対象で、受給資格期間を満たすまで加入し続けることができます。
05|「10年」に間に合わなかった悲しさ
冒頭の相談者の方は、65歳を過ぎてから相談に来られました。特例任意加入制度を使って70歳まで掛け続けることができたとしても、10年(受給資格期間)に満たない状況でした。
「70歳という年齢的な限界まで使っても、受給資格期間に届かない」——これが、この相談の本質的な問題です。
もし20代・30代・40代のうちに免除申請をしていれば、その期間は受給資格期間に算入されていました。「払えない」と思って滞納にしていたのか、免除申請をしていたのかで、65歳以降の人生が大きく変わっていた可能性があります。
「もっと早く知っていれば」——そういう後悔を生まないためにも、こういった情報を発信し続けることが大切だと思っています。
「免除の申請をしたい」「自分の年金記録を確認したい」「受給資格期間を満たしているか知りたい」という方は、ぜひ一度年金事務へご相談ください。


