特定性犯罪前科が判明したら、事業者はどうすればいいのか——「防止措置」を正確に理解する
犯罪事実確認を行った結果、従事者に特定性犯罪前科があることが判明した——。考えたくはありませんが、こうした事態に備えておくことが、こどもを守るために必要です。
今日は、DBS法が求める「防止措置」について、こども家庭庁の資料をもとに正確にお伝えします。
01|「防止措置」とは何か
防止措置とは、次のような事情を踏まえて、従事者による児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認める場合に、事業者が講じなければならない「児童対象性暴力等を防止するために必要な措置」です。
- 犯罪事実確認の結果
- こどもとの面談等により把握した状況
- こどもからの相談の内容
- その他の事情
つまり、犯罪事実確認の結果だけでなく、面談や相談から把握した情報なども含めて、総合的に「おそれがある」と判断した場合に、防止措置を講じる必要があります。
02|どんなときに防止措置が必要か——4つのケース
Q&Aでは、「おそれがあると認める」ケースとして、次の4つが示されています。
- (ア)特定性犯罪事実該当者であった場合
- (イ)在籍するこどもやその保護者から、特定の教員等による児童対象性暴力等の被害の申出があった場合
- (ウ)調査等の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合
- (エ)調査等の結果、児童対象性暴力等には該当しないが不適切な行為が行われたと合理的に判断される場合
(ア)は犯罪事実確認で前科が判明した場合、(イ)はこどもや保護者からの申出、(ウ)と(エ)は調査の結果によるものです。(エ)のように、犯罪に該当しなくても「不適切な行為」があった場合でも防止措置の対象となることに注意が必要です。
ただし、(ウ)と(エ)にある「合理的に判断される場合」という表現について、具体的にどこまでの証拠があれば「合理的」と言えるのか——Q&Aには明確な基準は示されていません。
これはまさに、2026年6月5日に東京都知事がこども家庭庁に提出した緊急要望で指摘されていた問題です。ガイドラインの内容が膨大で、事業者が必要な対応を理解することが困難であると。「合理的な判断」は、社労士や弁護士であっても迷う場面があり得ます。事業者が一人で抱え込まず、専門家に相談しながら判断することが大切です。
03|特定性犯罪前科が判明した場合、具体的にどうするか
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であると判明した場合の具体的な対応は、その人の雇用段階によって異なります。
| 雇用段階 | 講じる措置 |
|---|---|
| 新規採用の内定者 | 内定取消し |
| 試用期間中の者 | 解約(本採用拒否) |
| 現職者 | 配置転換等により、対象業務に従事させないこと |
いずれの場合も、「対象業務(こどもと接する業務)に従事させない」ことが求められます。
なお、こども家庭庁の資料では「これらの措置を講じるに当たっては、労働関係法令等を遵守した対応が必要です」と明記されています。法律に基づく措置であっても、労働法上のルールを守って行わなければなりません。だからこそ、就業規則の事前整備が欠かせないのです。
04|内定取消しに備えて——採用選考過程でやっておくべきこと
犯罪事実確認は施行後に行うため、採用選考の段階では結果がまだ出ていません。もし犯罪事実確認の結果、内定取消しが必要になった場合に備えて、採用選考過程で以下の対応をしておくことが適当とされています。
- 採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪前科がないことを明示すること
- 内定前(履歴書提出時)の誓約書等を通して、特定性犯罪前科の有無を明示的に確認すること
- 内定通知書等に内定取消し事由として「重要な経歴の詐称」を定めておくこと
これらの対応を行っておくことで、採用選考過程で特定性犯罪前科の有無を明示的に確認していたにもかかわらず、虚偽申告や黙秘があり、採用内定後の犯罪事実確認で特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合、内定取消事由(重要な経歴の詐称)に該当することになると考えられます。
こども家庭庁の公式サイトでは、「募集要項・求人票参考例」や「誓約書・内定通知書参考例」も公表されています。事前に確認し、自社の実態に合わせて準備しておきましょう。
05|施行前からいる現職者に前科が判明したら
法施行前から働いている現職者については、採用選考の段階で特定性犯罪前科の有無を確認していません。こうした現職者について犯罪事実確認を行った結果、特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合はどうするのでしょうか。
資料ではこう答えています。
事業者は、対象業務に従事させないよう配置転換等の措置を行うことが必要です。
こどもと接する業務から外すための配置転換等が求められます。配置転換以外の措置の考え方などの詳細については、こども家庭庁のガイドラインをご参照ください。
ここでも重要なのは、労働関係法令を遵守することです。配置転換や解雇といった措置を適法に行うためには、あらかじめ就業規則に懲戒事由や配置転換の根拠を定めておく必要があります。施行前の今、就業規則を整備しておくことが、いざというときにこどもを守る力になるのです。
DBS法対応の就業規則については、ぜひ一度ご相談ください。社会保険労務士・行政書士のダブルライセンスで、ワンストップで対応します。


