「労働委員会」って、ご存じですか?——私は、そこに6年間在籍しておりました
「労働委員会」と聞いて、何をするところか説明できる方は、あまり多くないと思います。
労働基準監督署は知っている。ハローワークも知っている。でも、「労働委員会」は聞いたことがない——そんな方がほとんどではないでしょうか。
実は私は、30年以上千葉県庁に在籍し、そのうち6年間は、この労働委員会の事務局で委員会議の運営を担当していました。今日は、あまり知られていないけれど、とても大切なこの行政機関についてお話しします。
労働委員会とは何か
労働委員会は、労働組合と使用者(会社)の間で起きた争いを、公正な立場で解決するために設けられた行政機関です。全国すべての都道府県に置かれています。
「団体交渉を求められたが、どう対応すればいいかわからない」「組合活動を理由に不利益な扱いを受けた」——こうした労使間のトラブルが起きたとき、労働委員会が間に入って、解決のお手伝いをします。
裁判所とは違います。費用はかかりません。無料です。
労働委員会の2つの役割
労働委員会には、大きく分けて2つの役割があります。
ひとつめは、「話し合いによる解決のお手伝い」です。
労使の間で争いが起きたとき、労働委員会は、労使いずれか一方または双方の申請に応じて、当事者の主張を公正な立場で調整し、話し合いによって解決できるようお手伝いします。
これには「あっせん」「調停」「仲裁」の3つの方法がありますが、実務上最も多く利用されるのは「あっせん」です。あっせん員が労使双方からよく事情を聴いて、団体交渉のとりもちや、双方の主張のとりなし、あっせん案の提示などによって、争いを解決に導きます。
もうひとつは、「不当労働行為の審査」です。
「不当労働行為」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。たとえば——
- 正当な組合活動を理由に、解雇や人事異動などの不利益な扱いをすること
- 正当な理由なく団体交渉を拒否すること
- 労働組合の結成や運営に支配介入すること
こうした行為は、法律で禁止されています。労働者や労働組合は、使用者が不当労働行為を行ったとみられるとき、労働委員会に救済の申立てをすることができます。労働委員会は審査を行い、不当労働行為の事実があると認めたときは、使用者に対して是正の命令を出します。
「三者構成」——3つの立場の委員がいます
労働委員会の大きな特徴は、「三者構成」です。
- 公益委員——弁護士や大学教授など、学識経験者から選ばれた委員
- 労働者委員——労働組合から選ばれた委員
- 使用者委員——使用者団体から選ばれた委員
この3つの立場の委員が、同じ数ずつ任命されています(委員の人数は都道府県によって異なります)。
公益・労働者・使用者、それぞれの立場の委員がいるからこそ、どちらか一方に偏ることなく、公正な解決を図ることができるのです。
なぜ、知られていないのか
これだけ大切な役割を持つ労働委員会が、なぜあまり知られていないのでしょうか。
理由のひとつは、労働委員会が主に「労働組合と使用者の間の争い」を扱う機関だからです。個人の労働者が会社と揉めたときに最初に思い浮かぶのは、労働基準監督署や弁護士でしょう。労働組合がない会社では、そもそも労働委員会に関わる機会がないのです。
でも、ある日突然、従業員が外部の労働組合(合同労組・ユニオン)に加入して、「団体交渉を求めます」と通知書が届く——そんなことが、中小企業でも起こり得ます。そのとき初めて、「労働委員会」という名前を知る経営者も少なくありません。
私がそこで見てきたこと
私は千葉県労働委員会の事務局で6年間、委員会議の運営を担当していました。
弁護士、大学教授、労働組合の幹部、大企業の経営層——こうした各界の有識者が集まる委員会議の場で、数多くの労使紛争がどのような経緯をたどり、どのような結論に至ったかを、最前線で見てきました。
そこで痛感したのは、労働委員会に持ち込まれる紛争の多くは、「もっと手前の段階で防げたはずのもの」だったということです。
就業規則が実態に合っていなかった。団体交渉への対応を誤った。ちょっとしたボタンの掛け違いが、取り返しのつかない泥沼になっていく。そんな事例を、何度も見てきました。
だから私は、社労士として「予防」にこだわっています。
紛争が起きてから対応するのではなく、紛争の火種を早期に見つけて消しておく。就業規則を整え、労務管理の基盤を固めておく。そうすれば、労働委員会のお世話になることなく、健全な労使関係を維持できるのです。
「うちには関係ない」と思っている経営者の方へ
「うちには労働組合なんてないから、労働委員会は関係ない」——そう思っている経営者の方も多いと思います。
でも、労働組合は従業員が一人でも加入できます。社内に労働組合がなくても、従業員が個人で外部の労働組合(合同労組・ユニオン)に加入することができるのです。ある日突然、聞いたこともないユニオンから「団体交渉を申し入れます」という通知書が届く——そんなことが、従業員数名の小さな会社でも起こり得ます。
大きな会社だけの話ではありません。小さな会社でも、労働委員会は関係あるのです。
そうなったとき、「労働委員会って何?」「不当労働行為って何?」と慌てても、もう遅いのです。
そうならないために、日頃から就業規則を整え、労務管理の足元を固めておくこと。それが、経営者にとっての最大の備えです。
労働委員会に6年間いた社労士だからこそ、その大切さを、自信を持ってお伝えできます。
「団体交渉について相談したい」「就業規則を整備して備えたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。労働委員会の現場を知る社会保険労務士・行政書士のダブルライセンスで、ワンストップで対応します。


